装具療法の効果学概論

中度の側弯症を患う人が手術を防ぐために唯一医者から
勧められる治療法が装具(コルセット)を使って背骨の湾曲を
矯正させる装具療法です。

装具の仕組み

ところが側弯症の進行を止めることができると期待して
みっともない装具(コルセット)をがまんして着けていたのに
結局手術が必要な程湾曲がすすんでしまう人が多いのも事実

はたして装具療法はどこまで側弯症に効果があると
学術論文などで証明されているのでしょうか?


実は世界中の側弯症の専門家の間でも
装具の効果については議論があり、たくさんの研究論文が
発表されています。

1984年に発表された論文ではコブ角が15度から30度あった
8歳から17歳までの側弯症の女の子255人について研究した結果
全体的には装具療法は進行を止めるのに効果があると出たものの
75%の患者では装具がなくても進行が進まなかっただろうという
可能性も指摘され効果の実証はできませんでした。1

その後1995年にアメリカ側弯症学会の研究で10~15歳の
コブ角が25~35度であった286人の側弯症の女の子に
協力してもらい経過観察だけ、ボストン型装具、
そして電気療法のグループにわけて4年間に渡って調査したところ、

その後湾曲の進行が進まなかった割合は
経過観察だけの患者さんの中では34%、
電気療法は33%であったのに対し
装具療法の患者さんは74%と最も効果が高く、
装具療法が側弯症の進行を
抑えるのに効果があることが実証されました。2

装具の効果

更に1997年には側弯症に対する装具の効果を調べた20個の論文の
データから側弯症と診断された1910人の患者さんの情報を検証。

経過観察だけを行った患者さん129人の間では49%、
電気療法だけを行った322人の患者さんの間では39%だけが
湾曲の進行は進まず手術せずに済んだのに対し
装具療法を行った患者さん1459人の間では60%以上の方が
湾曲の進行を抑えることができたという結果が出ました。

しかもこの調査では装具の種類と時間の効果に与える影響も調べ
装具を毎日16時間以下しか使わなかった患者さんの間では
62%の確率で進行が進まなかったのに対し、
装具を毎日23時間以上使用した患者さんの間では93%という
高い効果が示され、装具着用は23時間以上使うのが効果があると
証明されました。3

これらの学術論文により装具療法の側弯症への効果は
確実なものとして
一般側弯症治療に装具療法を使用するようになったのですが

上の論文の結果でも装具による側弯症の進行を抑えた確率は
実は経過観察だけのグループに比べて
10%程度の上昇率しかありません
(経過観察49%、装具着用60%)。

つまり逆に分析すると装具を付けた患者さん100人のうち
60人が進行が進まず良い結果を得たわけですが、
経過観察だけの患者さんでも49人は進行が進まないわけで、
つまりその60人のうち49人はもしかしたら
装具がなくても進行しなかった可能性がある
ということを示しているわけです。

つまり装具の効果があったと思われるのは
60人中その49人を除いた11人だけで
経過観察だけで進行してしまった患者数51人の中で
11人だけ救ったことになります。
これはつまり装具の効果が22%(患者数51人中11人)
しかないことを示し
装具が絶対的な効果があるとは言えないわけです。

その後たくさんの研究が実施されましたが、
装具の欠点である見た目の悪さや使い心地の悪さのため
患者さんが実際に一日23時間も使用することはまれで
また患者一人ひとりに合わせて造られる装具に効果の違いがあること
患者自身の骨の柔軟性や体質、背骨の湾曲の位置や角度の度合いなど、
さまざまな要因が重なって結果に影響するので
議論の余地のない効果の実証には未だに至っていません。

しかし他の療法と比べると装具療法だけが
ダントツ効果の結果を出しているわけです。
日々研究され改良が進んでいる現在の装具は
やはり側弯症治療のもっとも効果的な手段として
徹底的に活用することをお勧めします。

参照論文
1.Miller, J.A., Nachemson, A.L. and Schultz, A.B. (Sept, 1984).
Effectiveness of braces in mild idiopathic scoliosis. Spine,
9(6):632-5.
Spine (Phila Pa 1976). 1984 Sep;9(6):632-5.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6495034

2.Nachemson, A.L. and Peterson, L.E. (1995). Effectiveness of
treatment with a brace in girls who have adolescent idiopathic
scoliosis. A prospective, controlled study based on data from the
Brace Study of the Scoliosis Research Society. The Journal of Bone
and Joint Surgery, 77( 6), 815-822.
Department of Orthopaedics, Göteborg University, Sweden.
J Bone Joint Surg Am. 1995 Jun;77(6):815-22.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7782353

3.Dale, E. Rowe, M.D., Saul, M. Bernstein, M.D., Max, F. Riddick,
M.D., Adler, F. M.D., Emans. J.B. M.D. and Gardner-Bonneau,
D. Ph.D. (May, 1997). A Meta-Analysis of the Efficacy of Non-
Operative Treatments for Idiopathic Scoliosis, The Journal of Bone
and Joint Surgery 79:664-74.
Kalamazoo Center for Medical Studies, Michigan 49008, USA. rowe@kcms.msu.edu
J Bone Joint Surg Am. 1997 May;79(5):664-74.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9160938

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