妊娠や出産は側弯症を悪化させるか?

よくある質問の一つに妊娠や出産をすると側弯症の湾曲が
悪化するのかという疑問があります。

医者の間でもこの質問には興味があり、いままでの研究で
妊娠や出産が側弯症に与える影響を調べてきました。
側弯症と妊娠
特に手術をせずに止まったはずの
側弯症の湾曲が40度を超えている方は
妊娠や出産で更に悪化してしまう可能性が
あるのか心配なことです。

もし悪化によって肺や心臓への圧迫が強くなり
妊娠や出産が難しくなる可能性がでてしまうと問題です。


1980年に行なわれた研究(*1)によると、
10人の特発性側弯症を持った患者さんのうち3人は
最初の妊娠と出産によって2~18度ぐらいの湾曲に進行が見られたが、
その後の妊娠ではそれ以上悪化することは
なかったと発表されています。

逆にいうと10人中7人は妊娠や出産でも背骨の湾曲には何の影響もなかったわけです。
側弯症と出産
更に1987年(*2)には妊娠や出産が長期的に湾曲に悪化をもたらす
可能性があるかという研究がなされました。
研究の12年前の1975年に同じような側弯症の治療を受けて
側弯症の進行がとまったと判断された患者さん355人を対象に
調べられました。

その355人のうち175人はその後妊娠と出産を経験し、
残りの妊娠を経験していない180人と背骨の
湾曲の進行の比率を比較したところ、妊娠をした方としなかった方
どちらのグループでも25%の方が5度以上の湾曲の進行があり
10%の方は10度以上の進行が見られました。

つまり逆にいうとこの研究のおかげで、妊娠や出産を何度経験しようと
またどの年齢で妊娠しようと背骨の湾曲にはまったく影響がないことが
証明されました。

さらにその研究では側弯症強制手術を受けた患者さんの背骨の状況も
調べ、12年経ったあと、妊娠をした、しないに関わらず
手術をうけた背骨にほとんど湾曲に悪化はなかったと発表されています。

妊娠や出産が手術した背骨に与える影響については
1997年(*3)に更に研究され、およそ19年前1975年以前に
側弯症矯正手術を受けた患者さんでその後妊娠と出産を経験した方
146人の背骨のコブ角を調べたところ
ほとんど湾曲の進行が見られなかったと発表しています。

出産の方法は通常の平均割合15%より高い確率の約23%が
帝王切開で生まれていたようですが、その理由は側弯症の影響と
いうより産婦人科医師が不安なために帝王切開を選んだ可能性の
方がたかいようです。

ようするにこれらの研究から妊娠や出産は側弯症の湾曲の進行には
まったく影響しないことがわかり、側弯症があっても安心して子供を産むことができます。

ただ妊娠と出産を経験した方はやや側弯症による腰痛の
発症率が高くなるようです。普段の生活で重い物をもったりせず
また腰をまげてものを持ち上げるなど、腰を痛めることはしないよう
注意しましょう。

(*1)J Bone Joint Surg Am. 1980 Oct;62(7):1083-7.
The effect of pregnancy on idiopathic scoliosis.
Blount WP, Mellencamp D.

(*2)J Bone Joint Surg Am. 1987 Jan;69(1):90-6.
Scoliosis and pregnancy.
Betz RR, Bunnell WP, Lambrecht-Mulier E, MacEwen GD.

(*3)Eur Spine J. 1997;6(5):304-7.
Pregnancy and delivery in patients operated by the Harrington method for idiopathic scoliosis.
Orvomaa E, Hiilesmaa V, Poussa M, Snellman O, Tallroth K.

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